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『これからの住宅設計』(ID:0000230971) 読者登録解除フォーム
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・・・・・・バックナンバー第026号

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  ・・・これからの住宅設計・・・      第026号(2007.10.25)

   建築設計者の立場から住宅を考えるヒントを提供します。
                published by commonplace studio
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「これからの住宅設計」は戸建住宅や集合住宅(マンション)またそれらの改
修等、生活空間を作ること全般を題材にして、設計者の視点から住宅の在り方
を、読者の方々と一緒に考えてゆくメールマガジンです。

建築設計、住宅設計に関わる話題を取り上げ、住宅設計者としての経験や理念
をお話することにより、家創りについて違った視線で考える機会を提供するこ
とを目指しています。

読者の方々が住宅を設計する過程に触れることにより、家創りについて何か新
しいことを発見していただければ幸いです。



                        コモンプレイス スタジオ
                          代表  池澤 雅弘


※バックナンバーは下記ホームページでも御覧いただけます。
 誤字等も含めて、記事の訂正が必要な場合は、ホームページ上で修正させて
 いただいています。

                      http://www.commonplace.jp/


■目次

 01 今週のコラム--------------「あいまいさの必要性」
 02 住宅設計入門--------------No.26 各室の大きさ 2
 03 マンションの完成まで------No.26 全体をまとめて
 04 師の言葉------------------心に残った建築に関わる言葉 



///// 01 今週のコラム //////


「あいまいさの必要性」

多くの方が、写真に思えるほど精密に描かれた絵を観て感動したという経験を
持っていると思います。写実的には写真にかなわないのにどうして感動するか
考えてみると二つの理由が思い浮かびます。一つは誰でも感じることだと思い
ますが、技術の高さに感動することです。どうしたらこんなに正確な絵が描け
るのだろうと驚き感動し、同時に絵を描くことの忍耐に敬意を持つこともある
と思います。二つ目の理由は、写真以上に特徴を捉えていてそれを強調してい
ることから、たとえば人物画であれば本人を目の前にする以上にその人らしい
絵が描けるということだと思います。写真は一瞬を正確に捉えますが、絵は歴
史(時間)を捉えることができ心の内面までも描き出すことが出来ます。これ
は物理的に目の前にあるそのものを写し出す写真の正確さに対し手描きの「あ
いまいさ」が有利に働いた好例だと思います。

住宅の設計においても「あいまいさ」が有効に働くことはよくあります。例え
ば部屋の機能を決めずに納戸にも子供部屋にも使えるようにしておき、住み始
めてから状況によって使い方を決めてもらえるようにしたり、庇を延ばしその
下部を外部空間としても内部空間としても利用可能な空間を創るような設計は
よくあります。しかし法律上は「あいまいさ」は許されず、納戸には採光は必
要ないが子供部屋には必要なのでどのように使うかハッキリ決めるように指導
されます。庇の下も出幅や使い方によっては床面積に入る場合があるのでどの
ように使うか決めなくてはなりません。当たり前の話かも知れませんが、法律
は「あいまいさ」を嫌います。

図面作業に於いても手描きからCADに変ったことにより、「あいまいさ」が排
除されています。CADの場合材料の厚さを数値で入力するので、ミリ単位まで
正確に押えなければ図面が描けません。曖昧にしておくと作業が進んだ段階で
線と線が閉じなかったり、そのデーターを他人に渡たし作業を引き継いだとき
に問題が生じたりします。手描きであれば大体の巾で描いておき、仕様は文字
で記入すれば問題はありませんでした。また注意すべき部分などは力を入れて
描けば、それを見た側も気を付けてその部分を見るようになります。便利にな
った分、失ったこともあるということだと思います。

今の世の中は「あいまいさ」を嫌う傾向が強くなってきていると思います。細
かいクレームが増えていることからもその傾向を感じます。責任の境界線を明
確にして、自分が白で相手が黒であれば一気呵成に攻め立てます。本当はグレ
イの部分が大分あるような気がするのですが、それではなにも解決しないとい
うことでしょうか。

住宅の設計には「あいまいさ」を有効に使う必要があります。「あいまいさ」
を何も考えずに使えば、不正確であったり節度がなくなってしまいますが、き
ちんと筋を通して「あいまいさ」を残し、時間の経過がそれを埋めるようにな
れば日常に沿った空間が出来ると思います。住宅は竣工したときが終わりでは
なくそこから始まるものですから、住む人がつくり上げていく部分を残すこと
は大切ではないでしょうか。





///// 02 住宅設計入門 //////

ここでは、一般の方を対象に毎回テーマを決めて建築設計に関するアドバイス
をさせていただきます。

第26回のテーマは「各室の大きさ 2」

前回に引き続き、部屋の大きさを決めるポイントをマンションの規格寸法を例
に、今回は水廻りとリビングダイニングについて説明させていただきます。

トイレの大きさは内法寸法800(ミリ 以降この記事に於いて共通)かける
1300以上としている場合が多いです。タンクレストイレの普及により1300をも
う少し小さくしても問題はないと思いますが、全面に余裕が無いトイレは落ち
着かないかもしれません。使用する人の体格によっても違ってきます。またト
イレは便器の正面側から入るよりも、側面側から入るようにした方が、体の向
きを室内で変える必要が無く高齢者の方には使い安くなります。扉の巾は600
が標準で外開きにします。

洗面脱衣室は洗面化粧台、洗濯機パンと壁との間の脱衣スペースを800以上確
保します。化粧台キャビネットの巾は1000から1200以上奥行600が基本寸法で
す。洗濯機パンは奥行640、巾は2槽式の洗濯機で800または900、全自動型で
640です。この他にドラム式洗濯機に対応した巾740のタイプも新しく出てきま
した。最近は全自動型が普及していますので640角の洗濯機パンで計画するこ
とが多くなりました。扉は巾700程度とし、洗濯時に開け放しに出来るので殆
どの場合引戸にしています。

キッチンの作業スペース(厨房セットから壁、食器棚、冷蔵庫まで)は750以
上必要です。出来れば800確保したいところです。厨房セットの奥行は通常
650、食器棚の奥行は450が標準です。冷蔵庫のスペースは巾750から950、奥行
700程度としています。

リビングルームの奥行はリビングセットを置き、人が通れるスペースを確保し
ます。出来れば有効3000以上が望ましいです。同様に、ダイニングも有効2600
以上(対面カウンターがある場合はカウンター先端から)確保したいところで
す。使用家具や窓、バルコニーへの出入り口、キッチンカウンター等の位置に
より必要スペースが違ってきますので事前にしっかりレイアウトすることをお
勧めします。またダイニングテーブルの位置は設定と違ってくることが多いの
で、コードペンダントの天井下地は大きめ(900角程度)に入れておく必要が
あります。

2回に渡り取り上げさせていただいた寸法は、マンションのユニットタイプを
計画する時の基本寸法です。戸建の場合必ずしも当てはまるとは限りませんが
、機能的に使いやすい大きさは存在し、広ければより好ましいということもあ
りません。限られたスペースを有意義に使っていただきたいと思います。





///// 03 マンションの完成まで //////

マンション設計の依頼から竣工にいたる出来事を、設計事務所の立場から紹介
させていただきます。マンションはどうやってできるのか、どれだけの作業が
必要なのかご理解いただければ幸いです。


   No26 「全体をまとめて」

長い間連載させていただいた「マンションの完成まで」も今回が最終回です。
連載を始めた動機は、社会的に注目を浴びる設計事務所ではなく一般的な設計
事務所がどのような仕事をしているか紹介したいと思ったからです。バブル崩
壊以後、建設業界は不況に喘ぎましたがマンション業界だけは活況を呈し、建
設業界は深くマンション業界と関わるようになります。今現在マンション設計
は設計事務所の仕事の中心的な役割を担っていると言ってよいと思います。

マンション業界の活況はマンションを大きく変貌進化させ、使い勝手がよく販
売価格も安い物件が多くなりました。特徴的な出来事として、民間デベロッパ
ーは分譲マンションの業績に於いて住宅公団(都市再生機構)を追い抜いたこ
とにより、公団は1999年に分譲住宅供給を終わらせました。また床暖房やダブ
ルロック、複層ガラスなど世の中のニーズにあった技術を急速に普及させまし
た。

マンションが普及したことにより、住む場所の個性という点では失ったものが
あるのではないでしょうか。デベロッパーはデザイナーを入れてその点をカバ
ーしようとしていますが、何となくかっこいいとか、うけがよいというもので
はなく、歴史の中の様式となるような個性を生み出すのはかなり難しいことだ
と思います。今後何十年もかけてマンションの価値を高めることを理想に良い
ものをつくり続けていけば、マンションの個性的価値が理解されるときが来る
かもしれません。

また仕事の進め方において、分譲マンション特有の工事業者決定方法、工事監
理方法などはこれまで常識であった競争入札や監理指針と隔たりが生じており
、合理性を考慮の上分譲マンション特有の形に変革して行く必要性を感じてい
ます。

分譲マンションの設計は、マンション販売との関係から通常の建物と少し違っ
た進め方をしなければなりません。パンフレットの作成やモデルルームの建築
等にも設計事務所は関わってきます。他の建物に比べ着工数の割合が高いのに
、分譲マンションに特定した設計監理に関わる詳しい書籍は殆ど発行されてい
ないのではないでしょうか。今回の連載を通して読んでいただければ経験が浅
い設計者も仕事の流れを理解していただけると思います。

最初はもっと色々なエピソードを盛り込み、設計事務所の仕事について業界以
外の方々にも楽しく理解していただこうと思っておりましたが、回を重ねるご
とに技術的な説明が多くなってしまったことは反省しています。しかしマンシ
ョンを購入しようと思っている方が少々解からない部分があったとしても、敷
地の確保から引渡しまで全体を通して読んでいただくことによって得られる、
各論からは得られない知識がきっとお役に立つと確信しています。長い間ご愛
読ありがとうございました。近い内に全体をホームページに掲載の上、少しず
つ加筆して行くつもりです。


次回からは建築材料や設備機器をメーカーのホームページを通じて紹介する記
事を連載する予定です。これから家を建てようと思っている方や改修を考えて
いる方にきっとお役に立てると思いますので、今後もご愛読よろしくお願いい
たします。





///// 04 師の言葉 /////

私が実際に接した建築家、恩師、仕事仲間や書籍等のなかで印象に残った言葉
を紹介させていただきます。


    「そのアイディアは誰かが実現させる」

黒川紀章さんの突然の訃報に驚きました。この言葉は同じ時代を生きた建築家
磯崎新さんが、産経新聞に書かれた追悼文の中にある言葉です。

私が学生の頃、黒川さんに対するイメージは「自己主張が強く、利用できるも
のは利用し多少強引でも前に突き進む」という力強さを感じていました。そし
て建築家には珍しくテレビなどに度々出て発言していために少し俗っぽい印象
も伴いました。

対して磯崎さんは今まで建築に無かった要素を作品の中に取り入れ、建築の世
界を広げてくれた人という印象を持っています。建築系学生の間では話題の中
心は磯崎さんで、新しい作品を発表すれば流行歌のように皆が夢中になりまし
た。学生の人気は磯崎さんの方が大分高かったようです。

追悼文の中で建築家としての態度選択につい磯崎さんが書かれた一部を引用さ
せていただきます。「私は建築を建築として思考する道を選んだ。建築を批判
的にデザインする。一方、黒川紀章はメディアの中で行動する道を選んだ。社
会、政治、経済など、建築を外側から決める枠と組み合うことになる。その面
倒な役割を身軽にこなした。」私が全く違うイメージもった二人は、実は徹底
的にお互いを補完し合う仲だったのです。お互いの存在を際立たせたのは、そ
れぞれが進んだ道を成就した結果と言えると思います。そして「黒川紀章のポ
ジションは誰も代替できないが、そのアイディアは誰かが実現させることだろ
う。それは私の長く伴走した経験からも保証できる。」と結んでいます。

黒川さんも「自分のアイディアは自分だけで全てを実現できない。いつか誰か
他の人に実現してもらえればよい」とテレビで話されていました。多くの実績
を残し、自分に対する評価を気にせず世の中に貢献する気持ちが無ければ出て
くる言葉ではないと思います。

選挙に立候補したとき「残りの人生10年を政治家として生き、国民のために働
きたい」と何の衒いなく涙ながらに懇願する姿はまさしく日常の生活を育む庶
民の姿と同じであり、私が学生の時に持ったイメージには多くの誤解があった
ことに気付かされました。普通より大分遅く大人になりかけている私にとって
、これから多くのことを黒川さんから学びとれると思っていました。本当に後
10年は生きていてほしかったです。残念でなりません。





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■コモンプレイス スタジオは建築士事務所です。

 住宅の設計依頼は勿論、設計事務所の敷居が高く感じているお客さまに対し
 てメニューを用意しています。

1.お客様が書いたスケッチから設計図を作ります。工務店に設計施工を任せて
 しまう場合図面があるとお客さまの意図が明確に伝わり、自分の理想に近い
 形で家創りが進められます。

2.工務店に全てを任せてしまうと工事が進むうちに不安になることや、疑問点
 が出てくると思います。そのような場合のアドバイスを行います。

3.マンション購入の際、フリープラン等のオプションがある場合に図面を作成
 し、お客様の理想に近い空間を作るお手伝いをします。

その他、誠心誠意をモットーに豊かな日常空間と建築文化の創造を目指してお
りますので是非ホームページをご覧ください。

                 http://www.commonplace.jp/
                   
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【発 行】コモンプレイス スタジオ   commonplace studio
【編 集】池澤 雅弘           masahiro ikezawa
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